「検査数」フェイクニュースが深刻なのは、社会に実害
をもたらしていることだ。メディアなどでは検査数の国
際比較を根拠に、「希望者全員にPCR検査を受けさせる
べき」「国民全員にPCR検査を」といった極論が跋扈し
ている。これを見た人たちは、保健所や医療機関に駆け
込み、「心配なので検査してほしい」などと強く求めるこ
とになる。ただでさえギリギリの状態の現場に、更なる
過剰な負担を強いているのは罪深い。
■福山哲郎参院議員発フェイクニュース
国会でも大間違いが垂れ流されている。一例が、福山哲
郎参院議員(立憲民主党)の5月11日参院予算委員会
での質疑だ。「日本には隠れた感染者がどれだけいるのか」
と専門家会議の尾身茂・副座長を厳しく追及。答弁を再
三遮った挙句に「答えてもらえない」と切り捨てる姿勢
に批判が噴出。ツイッター上で「#福山哲郎議員に抗議
します」ハッシュタグが拡散される事態になり、13日に
は福山議員が「本意でなかった」と言葉遣いにつき謝罪
した。だが、言葉遣い以上に問題なのは、発言内容だ。福山氏
は質問の中でこう発言している。
「世界中はこの無症状・軽症の方まで含めて検査を入れ
て感染者を出しているんです。それで実態を把握する中
で解除の条件とか経済の回復などについて議論している
んです」
「日本の場合、(実際の感染者が検査で判明している人の
10倍いるなら)10万人、日本中にいて、その人たちが感
染を広げているんじゃないんですか」
「世界中は無症状・軽症の方まで含めて検査(して)実
態を把握」は、事実ではない。どこの国でも、これまで
感染者の全数把握など行っていない。これは、先に触れ
た陽性率のデータからも明らかだ。陽性率が日本よりず
っと高い欧米諸国の多くでは、日本以上の規模で、隠れ
た感染者が存在するはずだ。また、日本を含む多くの国々
で、PCR検査とは別途、感染規模を把握するための抗体
検査が実施されつつある。例えばニューヨーク州の検査
結果は陽性率12.3%、大阪市・神戸市はそれぞれ1%、3%。
いずれにしても、把握されていた感染者の規模をはるか
に上回る。
福山議員は、検査数だけをみて、無邪気に「諸外国はす
ごい。日本はダメだ」と誤解しているのかもしれない。
しかし、それでも、国会議員の発言はマスコミで報じら
れる。「国会で指摘されているのだから、そうなのだろう」
と、多くの人の誤解をより確固たるものにしていく。国
会議員発のフェイクニュースは罪深い。