そういうと叔母が葉月の胸から顎の辺りを鞭の先端で一撫でした。
「私は奴隷に与える責め苦は全て自分で身を持って体験してから行
うわ。
増上慢にならないためにもね。それこそが本当の女王様のあるべき
姿だと私は思うわ。
ジョン・アクトンに曰く『権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐
敗する』
リンカーンに曰く『ある人物の本性を知りたいのならそいつに力を
与えてみろ』
そして心理学者のキプニスは人は権力を握るとどんな人物であれ、
横暴に振る舞い、
目下の者に理不尽な要求をするようになることを突き止めたわ。
私もこれまでの人生でそんな人間を見てきたからわかるの。
でもね、人は相手に感謝し、自らを戒めることで堕落を防ぐことが
出来るのよ
それとも葉月はそれは違うと思う?」
「いえ、叔母様の仰るとおりだと思います」
葉月は叔母の言葉に頷いて見せた。葉月はこの人物がとても苦手
だ。
叔母が優しげに頬を緩ませて、葉月を見つめながら語りかける。
「ふふ、そんなに畏まらなくてもいいわ、葉月。私も少し背伸びを
して、ちょっと尤もらしい説教をしてみたかっただけだから」
そう言いながら、アンティーク調の椅子から立ち上がり、叔母が葉
月に顔を近づける。
「それでも、やはり説得力は必要よ。葉月、あなたが何かの拍子で
約束を破ってしまった時、
『約束を破ることは悪いことだ』とあなたに忠告した相手がいつも
約束を破ってばかりいる人だったら、
あなたはどう思うかしら?その人の忠告自体は確かに正論ではある
わ。
でも、あなたは相手に何の説得力も感じないでしょうね。『いつも
約束を破るような人にそんなことを言われたくはない』って」
葉月はいつも感じるのだ。叔母の双眸の奥に称えられた知性と狂気
の光を。
そして、葉月は黙って叔母に臀部を突き出すと、スカートを捲くり
あげ、下着を下ろした。
途端に叔母の鞭が葉月の尻肌に食い込む。
「ぐう……ッ」
「葉月、あなたは奴隷に恵まれているわ。それはあなたにとっての
幸福よ。
でもね、あなたの幸福は奴隷にとっての幸福ではないわ。
そして偽りの優越感というぬるま湯に浸かっていれば、あなたはい
つまで経っても女王様として成長しなくなるのよ」
叔母が鞭を交差させ、葉月の尻肉に鮮やかな赤い線を刻んでいく。
室内に鞭を打ち鳴らす響音が広がり、葉月は苦痛に顔を歪ませなが
らも叔母の手による鞭打ちに耐えた。
葉月の尻房を鞭で責めながら、叔母が穏やかな口調で語りかける。
「よく聞きなさい、葉月、あなたはエスの女王様とエゴの女王様を
間違えてはいけないのよ」
「くうぅっ、はあ……はあ……わかりました、叔母様……」
尻肌一面が真っ赤なミミズ腫れに覆われ、血が滲み始めた。そこで
叔母が鞭の手を休め、葉月の臀部の具合を掌で撫でて確かめはじめ
る。
ひんやりとした叔母の手の感触は葉月の痛みを僅かながら和らげ
た。
「葉月はやっぱり賢いわね。それじゃあ、今日はたっぷりと責めて
あげるわ」
叔母が微笑みを浮かべながら、準備をし始める。